
ピアノ
マルティン・ヘルムヒェン
Martin Helmchen
ドイツ人ピアノ奏者マルティン・ヘルムヒェンの華麗な演奏は、これみよがしな派手さとは無縁だ。彼は、敏速な指とともに音楽の深部へと入り込み、知性と生気に満ちた感情を追求することによって、聴き手を天上へといざなうタイプの演奏家である。
『タイムズ』紙(Geoff Brown, CD『ディアベッリ変奏曲』について, 2018年1月)
彼の演奏は多くの点で模範的だった。とりわけ緩徐楽章において、オーケストラが投げかける厳めしいフレーズに応じる彼のシャイな受け答えは、どこまでも悲しげな遠方の地から私たちのもとに届いているかのようだった。
『テレグラフ』紙(Ivan Hewett, 2016年6月)
私が知る唯一のこと、それは生涯最高のシューマンの協奏曲を聞いたということ。
『ドゥヴォワール』紙(Christophe Huss, 2018年11月)
約20年にわたり世界屈指の舞台で演奏を重ねてきたドイツ人ピアニスト、マルティン・ヘルムヒェンは、今日、もっとも引く手あまたのピアニストの一人である。彼は、音に対する驚くべき感性と精巧なテクニックに支えられた独創的で強烈な演奏によって、他に抜きん出ている。2020年には名誉あるグラモフォン賞を受賞した。
2024/25年シーズンには、フランクフルト歌劇場管弦楽団のアーティスト・イン・レジデンスを務める。また、デンマーク国立交響楽団、バーミンガム市交響楽団、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団、ノルウェー放送交響楽団、NHK交響楽団と共演する。ソロ・リサイタルでは、ベルリンのコンツェルトハウス、プラハのルドルフィヌムのほか、ボンのベートーヴェンフェストやマインツのSWRピアノ・シリーズなどで演奏する。
これまでウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、コンセルトヘボウ管弦楽団、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、シュターツカペレ・ドレスデン、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団、パリ管弦楽団、ウィーン交響楽団、ボストン交響楽団、シカゴ交響楽団、ニューヨーク・フィルハーモック、クリーヴランド管弦楽団など、数多くの著名な国際オーケストラと共演している。指揮者ではヘルベルト・ブロムシュテット、クリストフ・フォン・ドホナーニ、アラン・ギルバート、ベルナルト・ハイティンク、マンフレート・ホーネック、ヤクブ・フルシャ、パーヴォ・ヤルヴィ、ウラディーミル・ユロフスキ、ファビオ・ルイジ、アンドリュー・マンゼ、クラウス・マケラ、アンドリス・ネルソンス、サカリ・オラモ、タルモ・ペルトコスキ、山田和樹らと定期的に共演している。
室内楽はヘルムヒェンにとって特別な位置を占めており、その情熱はチェロのボリス・ペルガメンシコフに大きなインスピレーションを与えられたものだ。現在の親しい室内楽パートナーには、妻であるチェリストのマリー=エリザベート・ヘッカーのほか、フランク・ペーター・ツィンマーマン、ユリアン・プレガルディアン、オーギュスタン・ハーデリヒ、アンティエ・ヴァイトハースらがいる。
BBCプロムス、タングルウッド、シューベルティアーデ、ロッケンハウス、ルツェルン音楽祭、マールボロ音楽祭、アスペン音楽祭など著名な国際音楽祭に客演。またヘッカーとともにフリッセン国際室内楽音楽祭を創設し、共同で芸術監督も務めている。
録音はアルファ・クラシックス・レーベルに行っている。最新盤は2024年5月にリリースされたJ.S.バッハの「パルティータ」全曲で、グラモフォン誌のクリティクス・チョイスを受賞。2022年3月にはシューマンのピアノ作品を収録したアルバムをリリースし、高い評価を得た。これまでの録音には、ベートーヴェンの「ディアベッリ変奏曲」、メシアンの「幼子イエズスへの20の眼差し」、そしてヘッカーとのシューベルトとブラームスのアルバムなどがある。
1982年ベルリン生まれ。ベルリン・ハンス・アイスラー音楽大学でガリーナ・イワンゾワ、ハノーファー音楽大学でアリエ・ヴァルディの各氏に師事。そのほか、ウィリアム・グラント・ナボレ、アルフレッド・ブレンデルに師事。2001年にクララ・ハスキルコンクール、2006年に「クレディ・スイス・ヤング・アーティスト賞」を受賞し、彼のキャリアは大きく形成された。2010年からはクロンベルク・アカデミーの室内楽准教授を務めている。妻マリー=エリザベート・ヘッカーと4人の娘とともにドイツに住んでいる。
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Concerto Repertoire